「拇指球、踵ラインの獲得」~エアロビック動作の端緒として~

「拇指球、踵ラインの獲得」~エアロビック動作の端緒として~

~足は親指、手は小指~ 古来より能楽などの伝統芸能、武術において、技能獲得の要諦を示唆する言葉です。

手の小指が大事なのは、小指が締まれば脇が締まり、力が腹(からだの内側)に集まります。それにより、無駄なエネルギーを放散することなく、強い力を発揮することが可能となります。柔道の組手、ウエイトのリフト動作なども小指側主導になっています。

足の親指の役割も同様に、立ったときには、足裏の三点{親指の付け根(拇指球)、小指の付け根(小指球)と踵}に重心を置くようにするのが良いと言われています。からだの中心が意識でき、安定した三角体の作用により姿勢が安定します。これにより力を発揮するレディネスが形成されます。

これらは、子どもがエアロビックを学習するうえでも要点となり、指導の勘所となります。幼児や経験の乏しい児童の特徴として、小指の付け根と踵に重心がかかり過ぎ、力が外側に逃げてしまう現象が見受けられます。これでは足関節の機能的な動きが妨げられ、下肢の動きの連携が未熟な状態であり、リズミカルな連続動作を行うことが難しく、上肢のブレに表層される不確かなアライメントの原因となります。

運動の基本となる下肢の正しい動作は、幼児期までに獲得が望まれ、児童期にジュニアエアロビック検定に取り組む際の重要なレディネスとなります。

私が主宰するキッズガーデンでは、幼児期の段階で下肢の連携および、足首のローリング運動の獲得に主眼を置き、準備体操のメニューとして以下の運動を取り入れています。日々の稽古にて繰り返し行うことで、確実に理想の動作へと近づいていきます。

~エアロビックの稽古にて、実践している動き作り(発育発達体操)実例~

①(背伸び、膝屈伸)
足(裸足)を骨盤幅に開き平行を保ちながら、背伸と膝屈伸を行うことで、拇指球と踵を結ぶラインを意識しながら動くことが出来るようになります。さらに背伸びをした状態を維持する訓練により、持続的に脚の内側主導の動作を成熟させることができます。これにより正しいアライメントの完成も期待できます。

②(2番プリエ、四股)
2番プリエは、足裏三点の重心づくりに効果的です。なおかつ、脚の内側に意識を置いた稼働が身につきます。相撲の四股を踏むことも同様の効果があります。重心、親指全体と踵のラインに意識をおくことで、効果的に力を発揮することができます。

③(蹲踞)
蹲踞(そんきょ)姿勢も有効です。足の親指の付け根に力が集まることにより、脚内側へのエネルギーのためが出来あがり、筋の出力を上げることができます。これにより瞬発力を発揮する原動力が生まれます。

①から③の基本動作は、単に運動効率を獲得するのみにあらず、日常生活の所作を美しくする動作様式として、古より伝承された日本文化の粋に極みを持つものです。


書責:梶原和歌子

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