主題
幼児、児童の調整系能力の開発 ~やる気にさせる、キッズエアロビクス指導~
序論
私の子ども時代、未整備の裏山は、近所の子どもたちの格好のあそび場でした。急な崖はスリル満点のすべり台、枝や根っこはジャングルジム、頂上には秘密基地があり、日が沈むまで夢中になってあそぶ毎日でした。異年齢の子どもたちが一緒になってあそべるようにルールを工夫したり、次の行動を推理し、諍いや怪我を回避する知恵もあそびの中から学びました。
子どもにとって、社会全体が優しくおおらかな時代、体力や運動能力は、風土や地域の子どもたちの繋がりによって自然に育まれ、集団の規範とともに愛着を持って伝承されるものでした。子どものこころとからだの成長滋養が豊穣であった時代、子どもの体力や運動能力は、あそびを通して無意識に、楽しく、効果的にからだに沁み込むものでした。
昨今、過剰な情報と人工的刺激に溢れる環境は、子どもらしい喜怒哀楽の感情、環境への適応、生活リズムはもとより、発奮、意欲、我慢といった情緒的な反応をともなった行動の「ちょっとしたおかしさ」の一因になっているように感じます。また、各種機関の統計が示唆する、子どものからだの変調が不可逆的に進行している現状にも、空恐ろしさを感じます。
私たち、運動やダンス、スポーツ種目を教材に子どもの教育に携わる者は、子どものこころとからだの豊かな成長を責務とし、生きる力の土台づくりを担っていきたいものです。子どもが意欲を持って、継続的にスポーツ活動に取り組み、成長を実感する。そのサイクルを実現するために、私の教室が実践する、安全で楽しく効果的な学習指導の工夫の一端を、エアロビックを題材に紹介したいと思います。
演習
1, 導入あそび(手あそび、リズムあそびなど)
(1)あっちむいて、ホイ!
2人組、先生と
(2)じゃんけん、ポーズ
勝ち、負け、あいこでポーズ
ねらい
身近なあそびを教材に、慣れた動作で即時反応を促し、学習者の集中力を高め、展開へのレディネス形成をねらいとします。
2, 導入エアロビクス(フリースタイル)
(1)エアロビクスのリズムに合わせて自由に歩く
手の動きを加える
歩き方を変える
模倣あそびを加える
ウォーミングアップの要素を加える
ねらい
幼児は、動物、乗り物、ヒーローなど興味の発露になる教材を用い、空想より模倣へと結びつけることをねらいとします。
児童は、主運動への準備となる運動や、グループ学習で意思の疎通を円滑にし、こころとからだのレディネス形成を図ります。
3, 幼児向け振付ダンス
(1)クラリネットをこわしちゃった
お遊戯からエアロビクスへの展開
ねらい
リトミックあそびの要素を加え漸増的に協応動作を学習します。また、歌詞を味わい、情操を踊りで表現する楽しさを感受します。
4, フラフープでチームワークステップ
(1)ミッキーマウスマーチ
遊具(フラフープ)を用いて回旋運動
タイミング、スピード、バランスの調整運動
ねらい
様々な運動要素を踊りながら学習します。チームで協調し楽しみながら、からだを円滑に活動させる能力を養います。
5, エアロビクスの運動要素
(1)お手玉エアロビクス
ウォーキング運動
ジャンピングジャック、方向転換
お手玉あそび
スキップ、早歩き旋回
ねらい
エアロビクスの基本動作を、お手玉を介在に学習します。単調な運動にゲーム要素を加味することで学習意欲を高めます。
お手玉を用いた伝承あそびの数々は、巧緻性を養う優れた教材です。いにしえ歌と合わせることで、情操を刺激し、優しい郷愁に包まれます。
6, レクリエーションダンス
(1)Y.M.C.A
ステップタッチ、ギャロップ、ケンケン
グループでポージング
ねらい
軽快な音楽に動きや呼吸を合わせ、集団で高揚感を味わいながら、3種類のエアロビックステップを学習します。
すぐに踊れる、みんなで踊れるダンスです。運動会や発表会などのイベントにも応用できます。
子どものからだが動きを理解し、スキルを獲得するためのレディネスは、意欲の喚起にあります。スキル学習の適応過程における、知覚、模倣の過程を、様式化、適応、洗練へと展開する前段階と捉えます。子どもの興味の発露となる教材を、楽しく模倣できるように、年齢や習熟度に合わせて加工を加え提供します。意欲を持って繰り返し稽古することで、スピード、バランス、タイミングが調整され、円滑で洗練された動作、協応力が向上します。上達の喜びをからだが感じることで、運動が習慣化され、次の課題への意欲が芽生えます。
書責
梶原和歌子
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